HPVの正式な名前はHuman Papilloma Virus(ヒューマン パピローマ ウイルス)といい、日本語ではヒト乳頭腫ウイルスとも訳されています。
Pappiloma(乳頭腫)とは一般的にイボのことです。からだのどこかにちょっとしたイボがありませんか?それはこのパピローマウイルスというウイルスが感染してイボを作っているのです。
それじゃあ、イボがあったらがんになるの??と思ってしまいますよね。そうではないのです。
HPVには200種類以上の「型」があるとされています。そのうちのほんの15~20種類程度が今の所子宮頸がんを起こす可能性のあるHPVだとされています。その数は、研究が進むにつれて増え続けています。
一般的に、子宮頚がんを起こすと言われている型のHPVをハイリスク型HPV、ハイリスク群HPVなどと言います。
ハイリスク型HPVは今現在では一般的に13種(16,18,31,33,35,45,52,58,39,51,56,59,69)を言いますが、研究が進むにつれて26,53,66,70,73,82型なども子宮頸がんに関連しているとされ始め、注目されています。
HPVは自然に感染することはなく、セックスなどによって膣の中にウイルスが運ばれることによって感染します。
男性の陰茎や亀頭、女性の外陰部や膣は重層扁平上皮(じゅうそうへんぺいじょうひ)というとても丈夫な組織でできてるので、ウイルスが付着した程度では感染しません。
しかし、子宮が膣の中に飛び出ている部分には、その重層扁平上皮からとても弱い円柱上皮という組織に切り替わる部分があるのです。ハイリスク型HPVは、その部分にできた傷などから感染しやすいと言われています。
どうしてそんな部分に傷ができてしまうのでしょうか?
セックスはこすり合う行為なので、肌に目に見えないくらいですが小さな傷ができてしまいます。その傷からウイルスが侵入して感染してしまいます。
感染後、持続感染が続くとがんへと変化し始めることになってしまうのです。
ハイリスク型HPVに感染したからといって、すぐに、そして必ずがんになってしまう、ということではありません。一般的に80%の女性が一生のうちに一度はHPVに感染するとされています。もし全ての感染ががんになってしまったら、女性の大半が子宮頸がんで命を落としてしまっていることになります。
でも、実際は感染しても90%くらいの人は、自分の免疫力でしっかりと排除できるのです。そう、インフルエンザやノロウイルスのように、ずっと感染しているのではなく、いずれ免疫が勝ってからだから追い出されていくのです。
それでも、約10%の人が「持続感染」という状態になってしまい、膣の中にハイリスク型HPVが居続けてしまうことによって、がんへの変化を始めてしまうのです。
持続感染とは、免疫力が弱く排除できずにいてしまったり、排除しても排除しても繰り返し同じ型のウイルスに感染し続けてしまったりして、ウイルスが長く居続けてしまう状態です。
子宮頸がんについての項目で説明したように、持続感染が続くと、ASC-US、LSIL、、、などと進行していきます。次の段階に進んでも、まだまだ免疫力によって排除される場合がほとんどです。
それなので、ASC-USやLSILと検診で診断されても、後で精密検査をしてみたらなにもなかった、、、ということがよくあるのです。
ただ、HSILになってくると、免疫力での排除はだいぶ難しくなってきてしまいます。それなので、HSILまで行ってしまったら、部分切除などの処置の対象になるのです。